Feb 5, 2011

なんかよくわかんない、<世界18都市における日・韓製品イメージ比較>

博報堂が発表した<世界18都市における日・韓製品イメージ比較>(ニュースリリース詳細)という調査結果について、昨日からいくつか記事を見かけます。例えば、


Twitterでもちょっとつぶやいたんですが、ちょっとこの調査結果、信憑性がいまいちなので、ここで書いてみます。


1.世界じゃなくて、アジアでの結果になってる
それはもうこの世界18都市の内訳を見れば明らか。

  • アジア14都市(中国:4(香港含む)、台湾:1、韓国:1、東南アジア:6、インド:2)
  • 米国1都市(ニューヨーク)
  • 南米1都市(ブラジル、サンパウロ)
  • EU1都市(ドイツ、フランクフルト)
  • ロシア1都市(モスクワ)
アジアだらけ。それも、東アジアと東南アジアとインドしか入ってません。この偏りを見て、世界的な結果とか、世界共通な●●とか、とても言えないと思います。東の方のアジアでのイメージ調査といったところでしょう。

先のニュースリリース詳細を見ると、『Global HABIT』という調査は主要34都市で実施しているとのこと。じゃあ、なぜ18都市しか比較していないのか?その理由を明らかにするべきでしょう。

もしかすると、日本と韓国の製品イメージ比較はこれら18都市でしか実施しなかったのかも知れないし、納期の関係上18都市に絞ったのかもしれない。
おそらくそれなりの理由はあるのでしょうが、その理由を明記しなければ、読み手に誤解を与えることもあるし、あらぬ疑惑を抱かせるおそれもある。
その疑惑とは・・・、そう、都合の悪い結果だった都市を除外したんじゃないか、というもの。そんなことはないとは思いますが、一気に信憑性が下がってしまいます。


実際フランクフルトの結果を見ると、日本と韓国に差はないですからね。しかも、両者とも低いレベルで同程度。EUのN数が1なので、なんとも言えないですが、EU各都市のデータがもっとあれば、面白い比較ができるたかもしれないですね。


2.本当に製品に対する評価になっているのか?
製品に対する評価というよりも、日本、韓国という国自体に対する評価になっていないか、ということです。


もちろんこの両者は切っても切れない関係なのですが、製品に対するイメージ=国に対するイメージではないですよね。それやったら、あんまりこの調査の意味ないもんね。
ただ、この質問、特にアジアの中でのこの質問、どうしても国のイメージ込みで答える人が多いんじゃないかな?

例えば、アンケートに「韓国製品と、日本製品について」とか書いてあるとして、韓国が嫌いな人は「韓国製品」の点数を低くし、逆に「日本製品」の点数を高くしそう。あるいは、日本が好きな国は日本製品の評価が高くなり、韓国製品の評価が低くなりそう。
つまり、実際以上に高くなったり、低くなったりするんじゃないかなあ、と思うんですよね。

前者は台湾がいい例じゃないかと。この調査において、台湾の日本製品に対するイメージは韓国に比べて高い。台湾は韓国とは仲悪いですからね。
後者はサンパウロかな。ブラジルは日系の多い国。日本に対するイメージと韓国に対するイメージが大きくことなっても不思議はありません。
まあ、別にこれはこのアンケートに限ったことじゃないですけどね。

それと、もう一つ。現在急成長を遂げているアジアの中で、日本と韓国のそもそも立ち位置が異なるんじゃないかということ。そして、それがこのアンケートに影響してるんじゃないでしょうか。これは単に僕の推測ですが。


東南アジア、台湾にとって、韓国はちょっと前まで同じ途上国にいた国であり、どちらかと言えばライバルのような(?)関係。
一方で日本は、アジア諸国が発展に入ろうかという時期にはすでに世界経済の中心にいた国だと思います(現在では衰退に入ってはいますが)。


まあこれはマインドセットの問題なんですが、そういったイメージがこのアンケートに入ってくることはどうしても避けられないと思うんです。ライバル心というか、嫉妬心というかなんというか、なんというか。

3.韓国製品との相対比較だけが目的なの?
この分析の意味がよくわからない。


このニュースリリースの結論は「日本製品はイメージにおいて韓国製品を上回る」というもの。結論とは課題の答えなので、この分析の課題は韓国との比較のみなんです。


でも、それが大事なのか?ポイントはそこなのか?


OK、確かにそこも大事でしょう。競争やもんね。負けたくない。それはいいことだとは思う。
でもなあ、比較にだけこだわっているから結論がミスリーディングになるんやん。

「高品質」イメージ比較はまあいいわ、その次の「カッコイイ/センスがいい」イメージが問題。
「カッコイイ/センスがいい」イメージでも「日本製品」が「韓国製品」を上回っています。
ってのが結論になってるけど、それよりも日本製品の「カッコイイ/センスがいい」イメージの17都市平均(韓国除く)が42.2%しかないこと。
つまり、半分以上の人が日本製品をカッコイイと思ってないということ。
ここが重要なんじゃないかな、と僕は思うんですが。違うのか?


だから、上にリンク先を載せた記事のタイトルが日本製品は「カッコイイ」・・・世界18都市調査になったりするんやん。うそやん。半分いってないやん。
もちろんこの記事書いた人の読解力不足は明らかなんですが、このニュースリリースにも原因があると思います。


4.質問項目がなあ
これはもう、つまり「高品質」では競争に勝てないということで大西氏が述べていることズバリなんじゃないかな(このブログ、おすすめですよ。マーケティング関係ですが、いつもコンパクトにまとまっていてわかりやすいです)。

というわけであんまり書くこともないんですが、結局、質問項目が消費者目線じゃないんですよ。だから、このリサーチの意味がいまいちわからなくなるんです。

「高品質」イメージ。。。
低品質よりはいいけど、消費者の求めるレベル以上の品質ってどこまで必要なのか?
いいもの作れば売れる的な日本的な発想の設問に感じられてしょうがない。
そもそも韓国企業の戦略は高品質じゃなかったでしょ?であれば、韓国企業からするとこの結果、まあねえ、としか映らないかも知れないですよ。

まあ、「カッコイイ/センスがいい」の設問はありかなとは思いますが。デザインはますます重要になっていく要素だと思いますので。だからこそ、もっと高い数字が欲しい。



・・・というわけで、このニュースリリースにはつっこみどころがたくさんあるんですが、そのせいで信憑性が低くなってしまっています(僕にとっては)。
こういうことって、自分が何かやるときにも起こりがち。僕も気を付けないとなあ。

ファイト!

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