Sep 19, 2011

自動車の現地生産が進んでいく

土曜、日曜と日経新聞には自動車生産の現地生産に関する記事が多く見られました。

9/17(土)にはブラジル政府が国内産業保護のため、輸入車や現地での部品調達率が一定水準に達しない現地生産車を対象に関税率の大幅増加を発表したという記事が。
レアル高の影響もあり、輸入車が急増しており、国内自動車産業の競争力が低下しているんだとか。2011年1~7月の新車総販売数のうち22.4%が輸入車で占められており、ブラジル政府はかなりの危機感を持っているようです。
このような保護主義には国際的な批判が高まるおそれがある、としていますが、そんなのは承知の上でしょう。
ブラジルはBRICsの一角であり、人口も多く、今後の成長も見込まれている国です。まあ、インフレの懸念があるとはいえ、とても魅力的な市場。
各自動車メーカーにとっては対策が必要になってくるかもしれません。

まあ、このような高関税をかける国は、特に新興国では特に珍しいことでもありません。

9/18(日)にはホンダがロシアで乗用車を現地生産する方向であるという記事がありました。
主要部品を日本などから輸出して現地で生産する”ノックダウン方式”を採用する予定とのことですが、これもロシアに完成品を輸出する際の関税が非常に高いから。
プーチン首相がは新車への輸入関税をさらに引き上げる方針らしいので、これはもうロシアで生産しないことには競争ができないということなんでしょう。
ホンダがロシア生産を行うことによって、トヨタ、日産、三菱、そして来年から現地生産を始めるマツダと、日本の自動車会社勢揃いの様相です。

日本でもそうですが、ヨーロッパでもクルマ離れが進んでいるといいます。
特にヨーロッパでは、街から自動車を追いだしていくような都市づくりをしています。都市の中心に自動車を乗り入れさせず、歩行者に優しい(?)街づくり。乗り入れ可能なのはバスやタクシーのみ。そこにトラムなどを組み合わせる都市づくりが進んでいます。
したがって、これからの自動車産業は躍進目覚しい新興国でいかに販売台数を確保するかということがより重要になってくるわけです。

そりゃあ、ホンダもロシアに工場つくるよ。

さらに、この日の記事には、トヨタがハイブリッド用モーターなどの基幹部品に関しても現地で生産することで、中国市場に入っていこうという動きが紹介されていました。
ノックダウン方式ではなく、プリウスを中国で一貫生産するとのこと。これはトヨタにとっては海外初のことだそうです。
技術流出などのリスクを考えても、基幹部品から中国で生産することにメリットを感じているということ。つまり、それだけ中国市場の重要性を感じているということです。

先日の記事(「国内生産回帰と海外生産強化)でも紹介しましたが
トヨタはインドネシアに新工場を建設し、大幅な増産に乗り出すことを発表したばかり。
積極的に新興国での現地生産を進めていく意向です。というか、そうしなければ戦えなくなっているということなんでしょう。
本当にパソコン業界とは違いますねえ。

今後の新興国にはインフレ(になるかも)、人件費高騰の問題などからますます自国産業を守る傾向が強まる可能性があると思います。ということは、自動車会社は今後も現地生産を重視せねばならんということでしょうか。
これはつまり日本での生産が減少していくであろうことを意味していると考えられます。日産のゴーン氏も円高で野田首相に文句言ってたみたいやし。
多くの雇用を抱える国内自動車産業。その空洞化はますます加速していくかも知れないし、そしてそれはきっといかんともしがたいことなんでしょう。
これが時代の流れというものなんでしょうかね。

Sep 18, 2011

北極海まわりのあれこれ


地球全体が温暖化しているのか(そして、仮に温暖化しているとして、それは続くのか)はさておき、北極海では確かに海氷が減少しているようです。


そんな氷が減っている北極海について興味深い記事が2点ほどありました。

北極海の石油開発(日経新聞、9/1
北極海には、未発見の石油の1割強、天然ガスの3割が眠っているそうで、氷が溶けて開発しやすくなってきたことから、石油大手による開発が本格化してきたとのこと。

エクソンモービル(米)はロシア国営石油最大手ロスネフチと組んでロシア西北部沖で、
ロイヤル・ダッチ・シェル(英蘭)は米アラスカ沖で、
シェブロン(米)はカナダ沖で、 などなど


まあ、おそらく問題がないわけでもない。
沿岸諸国の国益に絡む問題が生じる可能性がまずあります。なんといっても、ロシアの存在が少し不気味ですね。たとえ決まった事であっても、いろんなことがひっくり返る可能性がないとはいえない国ですから。
また、地球温暖化の原因が人的要因であると考える人が多い(僕はまだまだ懐疑的ですが)ことから、これらの開発には様々なところから横槍が入るかもしれません。
「自分たちで温暖化を引き起こして、シロクマ(まあ、温暖化の犠牲のひとつの象徴ですね)の住処を奪っといて、今度はそこの資源を開発することでさらに自然を破壊するのか」とかなんとか。。。

これらの問題には政治でしっかりと対処して欲しいと思います。開発できるのあれば、するにこしたことはないですから。
中東の不安定さはしばらく、へたすると長期間続く可能性があります。リスク分散という意味でも、北極海で石油が取れることは重要なことだと思います。日本は石油輸入のほとんどを中東に依存していることからも、この北極海開発には積極的に絡んでもらいたいと思います。
そういう意味でも、日本はロシアとの関係をしっかり保っておくべきなんですよ。


■衛星と北極海航路 (日経新聞、9/15)
ウェザーニュースが北極海の海氷を観測する超小型衛星を1年後に打ち上げるとのこと。
海氷が減少している北極海において、リアルタイムで海氷の動きを予測し、安全な北極海航路を示すことが目的らしいです(夏だけ商用船の航海が可能になるらしい)。衛星はアクセルスペースとの共同開発らしいです。僕の後輩もこの衛生の開発に絡んでるそうです。

北極海に航路が開拓されることは、欧州~アジア間の輸送において非常に大きな意味を持ちます。
まず輸送距離が大きく短縮されます。
スエズ運河経由の2/3、喜望峰経由の1/2になるそうですから。
ということは、輸送時間も、燃料も大幅に軽減できます。
これは船側にとっても、荷主にとってもよいことですね。効率もよくなります。
また、海賊の多い海域を通らなくてもよい、という意外な利点もあるようです。まあ、最近はソマリア沖、東南アジアなどで職業としての海賊が多くいますからね。

そしてこの記事を読んで思い出したのが前々回書いた記事(「シベリアをアラスカをトンネルで結んでどうすんの?」)。なんかよけいにいらん気がするんよなあ。。。

Sep 10, 2011

国内生産回帰と海外生産強化

9/9(木)の日経新聞に面白い記事が隣同士に並んでいました。


ひとつは、富士通とソニーがパソコンの中国製造を減らし、国内製造を増やすという記事。
中国製造の人件費が過去5年間で2倍なったなど、コスト面において中国製造のメリットが薄れたことが大きな要因とのこと。それだったら、「日本製」(高品質だよってアピール)をひとつの武器にして国内出荷のみならず、輸出も伸ばしていこうということみたいです。


ふ〜ん。中国がダメなら日本に戻るのか。
中国の人件費が高騰したなら、もっと人件費の安いところに製造拠点を移動するんじゃダメなんですかね?
中国の人件費が高騰したため、工場をベトナムに移したとか、よく聞く話ですけどね。
それも全部含めて、日本で生産したほうが有利だと判断したということでしょうか。


ちなみに、その富士通ですが、記事によると
13年度にパソコンの世界販売台数を1000万台とし、輸出を11年度の3倍の約220万台に増やす方針。
なんだそうです。まあ、ほとんどが国内出荷という現状だけど、これから輸出を増やしていくときには「日本製」が武器になると踏んだんでしょうか。
個人的には「日本製」どこまで響くのかよくわかりませんが。「日本製」が効くというよりは、「日本メーカー」の信頼性が効くんじゃないかという気がします。
輸出を特に増やしたい先は、東南アジアと中近東らしいですが、じゃあ、そこで作ったほうがコスト的には安いんじゃないでしょうか。特に東南アジアはいまだに、日本の企業を一生懸命誘致してくれてますしね。
東南アジア製造の「日本メーカー」の製品。あかんの?日本製でも東南アジア製でも性能に違いはないでしょ?
間違いなく近い将来(もしかしたらすでに?)日本よりも市場が大きくなるやろうけどなあ。


ほんでもって、この記事の隣にあったもうひとつの記事というのが、トヨタ自動車が300億円をつぎ込んでインドネシアに新工場を建設するというもの。
”インドネシアは東南アジア最大の自動車市場への成長が確実視されており”とあるが、そんなもん人口が違うんやから100%間違いないです。
すなわち、成長するインドネシア市場含む東南アジアで販売する自動車の多くを現地で製造しようという考え方。
そのほうがコスト面で安いからでしょう。


先程のパソコン業界の話と反対ですね。
どっちがいいかは難しいところですが、というか製品サイズも違うものなので比較するのも難しいですが(自動車の場合は小さくて軽いパソコンとは輸送費の面でもコストが大きいから、販売する所からできるだけ近い場所で製造したい欲求はパソコンより強いはず)、個人的にはトヨタよりですね。


それにしても、業界によって(このケースでは)動き方が違う。おもしろいですね。
まあ、業界によってというか、グローバル度合いによってなのかも知れませんけどね。



Sep 7, 2011

シベリアとアラスカをトンネルで結んでどうすんの?


先週GIZMODEで見かけた記事ですが、いまいち狙いがよくわかりません。


シベリアとアラスカを結ぶ世界一長い海底トンネルの建設へ! 超巨大プロジェクトがスタート


15年かけてシベリアとアラスカを結ぶ105kmの海底トンネルをつくるそうです。
これによってロンドンとニューヨークが鉄道でつながるんだとか。
この記事を読んだときは「おーっ!」って思ったんですが、よく考えると何でここに海底トンネルが必要なん?

物資輸送に使用される予定であり、年間1億トンの物資が運べるそうなんですが、それってすごいのか?
ロンドンとニューヨークが結ばれるといっても、ロンドン(というかヨーロッパ)からニューヨークまで鉄道で物資を運ぶのって非効率だと思います。
時間的にも、お金的にも。
現在、遠距離の物資の輸送には主に航空便と船便が使用されています。トラックや鉄道もありますが、これは主に港(空港)まで荷物を運ぶ、あるいは港(空港)から荷物を運ぶことが目的でしょう。

基本的に、航空便はかなり高いけど、時間的には一番速い輸送手段です。
船便はちょっと時間はかかるけど、一度に大量の荷物を安価に運べます。
一方でトラックは小回り・融通が効きやすいですが、一度に運べる量は少なく、輸送費も高い。
そして、鉄道は線路がないと動けないためそこまでの小回りはききませんがトラックよりも大量の荷物を安価に運べます。しかし、量・価格のどちらをとっても船にはかなわないと思います。


となると、大量の物資を遠距離に運ぶにはやはり船なんですよ。
時間の面を考えても、ヨーロッパ〜北米をつなぐのであれば、大西洋を船で渡ったほうが早いはず。おそらく2週間程度で結べるでしょう。

じゃあ、カリフォルニアなど西海岸にi物資を運ぶ場合はどうなの、と思いますが、それでもアラスカから南下するわけですからね。有利になるかどうか・・・
というわけで、個人的にはヨーロッパから米国への物資輸送目的でこのトンネルが建造されてもペイするとは思えないです。というか、この目的でつくるのであればお金と時間の無駄ではないかと思ってしまいます。


じゃあ、仮にヨーロッパ〜米国の物資輸送が目的じゃないとすると・・・?
物資輸送が目的なら、ロシア中部からシベリア〜米国?トンネル掘ってまで運ぶ価値のあるものが存在する?
天然資源しか思いつかないけど、、、さすがにトンネルつくって運ぶことはないでしょう。例えば石油とか天然ガスならパイプラインでいいもんね。


じゃあ、仮に物資輸送が目的じゃないとすると・・・?
もうよくわかりません。
案外、失業者対策だったりしてね。

Sep 4, 2011

世界各国から人がいなくなるまで

エコノミストに面白い図がありました。


歴史の終わり、すなわち世界各国から人がいなくなるのがいつごろか、
を表したグラフです。
人がいなくては国は存続しえません。

これによると、例えば
香港は西暦3000年を 迎えることができず、3000年〜3500年の間に、
シンガポールや韓国にも人がいなくなっていくようです。
日本はというと、、、ほぼ中国と同時期、3500年になる直前に人がいなくなってしまう計算になってますね。あと、1500年か。。。
戦争もなく、国の存続に関わる大きな災害もなく(つまり、日本沈没みたいなのはなくってこと)、自然減少だけでも1500年。。。ちょっと短いよなあ。

さて、これ、どういう計算をしているかというと、
現在の出産率の中の女の子が生まれる比率を使って、ひたすら女性の数を追いかけているだけ。計算はとっても単純です。

例えば、記事の中でも紹介してますが香港の場合、
現在1000人の女性から女の子が547人生まれることが期待できるそう(54.7%)で、その547人から次世代には299人の女の子が生まれる計算になります(547x54.7%)。
香港女性の平均出産年齢が31.4歳であることを考慮すると、香港の女性人口は現在の375万人から25世代後の2798年にはたったの1人になってしまうんだとか。女性がいなくなれば子供は生まれないので、歴史の終わりというわけ。

前週号でも 紹介されていましたが、アジアの国々で特に結婚年齢が上がり、結婚しない人も増えています。そして生まれる子どもの数も減少しています。
出生率は欧米より低くなり、人口はどんどん減っていくでしょう。
個人的にはこれらは個人が選択する問題であり、ああしなさいとかこうしなさいとか、そんなんないよなあと思ってます。好きにしたらいい。
とはいえ、確かに人口が減少していくというのは問題やなあ。人が少なくなればなるほど国は元気がなくなっていきますからね。経済も発展しない。

今回の数値は半分ジョークみたいなもんだとしても、言ってることは間違ってない.。
なんとかしないといけないのかもしれないけど、もう手遅れな感もあります。
移民の積極的な受け入れ、子供に対する給付金(ただしやるなら不公平感なくね)、子供ができても働くことのできる環境づくり,など、語りつくされている感はあるものの結論・進展のなかなか見えないこれらのことをやっぱり考えないといけないですね。