Mar 1, 2011

資源国カナダのオイルサンド

今年に入って、中東や北アフリカで反政府の動きが大きくなっており、エジプトではムバラク大統領が退陣、リビアではカダフィ大佐が混乱中。3月にはサウジアラビアでもデモが起こりそうな雰囲気になってきました。
そんな混乱に乗じて、なんとイラン海軍の艦船が約30年ぶりにスエズ運河を通過し、イスラエルが警戒心を強めているということも起きています。


こうなってくると、原油の供給がちょっとずつ心配になってきたりしますね。日本は原油の大半を中東地域からの輸入に頼ってますから。
1970年代には、中東戦争、イラン革命のせいで、2回のオイルショックを日本は経験しています。僕はさすがに知りませんが、トイレットペーパーの買い占めなど、すごかったらしいですね。
普通、こういうことがあったら、「政情の不安定な中東に原油の大部分を頼るのは危険だ」と思うはず。そして、輸入元の分散をはかるもんじゃないでしょうか。これも外交なんじゃなかろうか。
これって、実は農業の安全保障だかなんだか、最近TPPに反対する人たちが使う理由に対する答えでもあると思いますね。


ということで、こちらのブログ(Market Hack「なるほど日本は省エネ先進国だけど、、、これが日本の輸入依存の現実だ」)で先進国の原油輸入元を比較しています。このブログ、投資関係の情報をいろいろな観点から紹介してくれていて、とてもためになります。


このブログによると、日本の原油の輸入元は

  • 中東:85%
  • その他:15%
ホンマ?一極集中やん。。。まあ、日本は天然ガスについては、50%以上が東南アジアやオーストラリアから輸入しているし、ロシアに出資もしてますけどね。

その一方で、アメリカは消費量の40%近くを国内で生産、輸入に関しても
  • カナダ:22%
  • 中南米:20%
  • 中東:15%
  • 北アフリカ:5%
  • 西アフリカ:14%
  • その他:24%
とどこかの地域に大きく依存しているということはありません。もちろん、地理的な位置っていうこともあるんでしょうけど、うまくリスクを分散しているという感じがします。
これって、やっぱり政治、外交の力なんでしょうか。

それにしても、カナダから1番輸入しているんですね。これって、ちょっと意外でした。
実は、カナダって、原油の確認埋蔵量がサウジアラビアに次いで世界第2位なんです。
その正体がオイルサンド。アルバータ州に大量に埋蔵されています。
オイルサンドというのは、石油成分を含む砂岩のことです。その埋蔵量は、カナダとベネズエラにほぼ集中しているようです。

カナダのオイルサンドの詳しい説明は、ナショナル・ジオグラフィックのこちらのサイトを見てもらうとわかりやすいかなと思います(「カナダのオイルサンド)。


オイルサンドは石油成分が組成の約10%であり、非常に粘性が強く、常温では半固体状なんだそうです。そのため、実際にこの石油成分を回収し、輸送するためには処理が必要になり、コストがかかります。
また、オイルサンドの採掘は環境にも大きな負担を掛けるようで、ここの部分の改善、フォローにも大きなコストが考えられます。
上記ブログの中にも、
原油価格が85ドルを超えると急に採算性が改善するで供給がどんどん増やせる仕組みになっています。
とありますが、これは逆に言うと、10年くらい前までの原油価格が低いところで安定していたころには採算が合わなかったということです。
今後、以前のように原油価格が20ドルとかで安定するようなことはないでしょう。埋蔵量の問題もあるし。もしかすると、100ドル超えで安定してしまうかもしれない。
そうなると、オイルサンドの存在が大きくなるんじゃないでしょうか。資源国カナダにとって、これは経済成長を支える大きな力になると思います。


カナダは中東に比べて、地政学リスクが非常に低い国です。それに、日本とは太平洋を挟むだけ。
日本が原油の輸入を、不安定になりがちな中東への依存から脱却する際には、カナダのオイルサンドは大きな候補です。もちろん、日本もとっくにオイルサンドの確保には動いているはずです。
10年後には、原油の輸入元比率がそれなりに改善しているといいですね。

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