日本の書籍・雑誌の流通は「再販売価格維持制度」と「委託販売制度」という2つの大きな取引慣行から成り立っている。 ・・・取引慣行っていうのがなんかいいですね。慣行っていうのが、なんか日本っぽい。
再販売価格維持制度とは・・・出版社が小売価格を定め、値引き販売を行わないことを条件に書店と取引契約を結ぶもので、公正取引委員会から独立禁止法の例外として認められている。
委託販売制度とは・・・流通段階での売れ残りを出版社に返品精算できる仕組み。取次や書店は不良在庫リスクを負わなくて済む。
この2つの仕組みにより、全国の読者に多種多様な出版物が同一価格で提供されてきた。
というわけです。ちなみに取次とは、出版業界の卸業者のことです。取次は、トーハンと日本出版販売という大手2社で約80%を扱うという寡占状態にあるようです。
これは明らかに悪しき習慣です。
本屋にとってのメリットは、在庫リスクを負わずに発注できるということ。出版社にとってのメリットは、値引きされることなく定価で販売できるということ。
なのですが、本屋が在庫リスクを負わないということは、本屋が頭を使わずアホになっていくということ。だって、余ったら「返せばいいやん」って絶対なりますからね。
さらに、大きな競争戦略要素、差別化要素であるはずの価格が固定されてしまうというデメリットがあります。
また、後で見るように、このような仕組みの中ではリスクを負わない本屋はどうしてもマージンが小さくなってしまいます。
そして、本屋はどんどん潰れていくのです。
出版社は逆に余ったら返品されてしまいますので、売れない本は刷らないようになるでしょう。どうしても売れ筋に力を入れるようになってしまいます。
すると、個性的な本屋が個性的な本を仕入れていこうと思っても、なかなか思うようにいかないのではないでしょうか?
さらなる悪循環?
取次も、在庫リスクはないですね。ただ保管して、搬入するだけ。
この仕組みは明らかに読者のことを考えていないと思いますね。
自分たちの、業界の利益に基づいた習慣ですが、それが出版業界の不振に結局はつながっていくでしょうね。
定価でしか買えない?価格は出版社の思うまま?
そこに読者の選択肢はありません。新刊本に関しては。
アメリカなどでは、こんな習慣はなく、完全に自由競争。本屋によって値段が違うことなんてざらです。
ヨーロッパも多分そうなのでは?
実際の数字を使って、出版業界の「仕組み」をみてみましょう。記事の中にある例です。
例:定価1000円の本を5000部出版して3000冊売れたとする。
取り分はそれぞれ、出版社:70%、取次:8%、書店:22%です。
①仕入(出版社→取次) 定価1000円x書籍5000部x70%=350万円
②卸(取次→書店) 売れた分の仕入れ代金を後で支払い、売れ残りは返品
③販売(書店→読者) 定価1000円x書籍3000部=300万円
④支払いと返品(書店→取次) 定価1000円x書籍3000部x(70+8)%=234万円
⑤返品と返金(取次→出版社) 定価1000円x書籍2000部x70%=140万円
以上より、それぞれの収入は、
出版社:350万円-140万円=210万円
取次:-350万円+234万円+140万円=24万円
書店:300万円-234万円=66万円
まあ、出版業界にもこれではいかんと考える人たちがいるようですからね。
こんな習慣は変わっていくでしょう。
どんな企業であっても、社会の、あるいは個人の役に立つことが存在意義であると、僕は考えます。
存在そのものが目的になってしまっている企業には存在する資格も意味もありません。
そのためには、しょうもない習慣はとっぱらってしまって、現段階において真に意味のある企業が生き残っていくべきです。
顧客(本屋にとっては読者ですね)に対して、必要な価値を、それも競合対比大きな価値を提供できるような企業が残っていくべきです。
のれんや立場にあぐらをかいているような、慣習に守られ生き延びているような企業は淘汰されてしかるべきです。
出版業界に限らない話ですけどね。
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